代わり映えしない話

高校に入って、初めてちゃんと恋愛をしはじめた。
女子高だったので、紹介してもらわなければ出会いが無い。
クラスメイトのお兄ちゃんが二つ年上で、偏差値の高い高校に通っていた。

その友達が女子高生に会いたい!ということでカラオケにみんなで行くことになった。
高校一年生で勉強も部活もたいして頑張っていない女子高の私たち。
比べて、共学なのに男子だけのクラスを選択し、国立大学特進コースに身を置いている彼らはとても優秀そうに見えた。

受験勉強の合間の息抜きが欲しかったそうで、それからはグループ交際的なかんじで、カラオケや花火、海水浴などを楽しんだ。
その中の一人に私は恋をした。
特進コースにいるような人には見えなくて、軽い調子だが言ってることは正論。

なんだかシュールな発言も多く、謎めいていたイケメンだった。
メールのやり取りをよくしていたが、二人だけで会うことが多くなった。
とくに何をするというわけでもなく、海辺でぼーっとしたり、ほとんど電車が来ない無人駅まで電車で行ってホームでおしゃべりしていた。

でも、付き合おうとか言われたわけではなくて、これってなんだろう?というかんじだった。
そんなことを女友達に話したのが11月。
出会ってから4ヶ月ほど経っていた。
いつの日か、いつものように電話しているときに「私たち付き合ってる?」と聞いたことがある。

するとモゴモゴとした歯切れの悪い言い方。
今は受験モードだし、合格するまでこのままの状態が良いと言われた。
そのまま電話を切って女友達に事情を話したら「それって3月までキープってことじゃん」と言われて、自分の存在がキープだと知って哀しくなった。

アドレス帳から情報を削除する前に、もう会わないから勉強頑張ってね、とだけメールしてすっぱりと関係がなくなった。
彼は九州のある大学に合格し、そのあとは大学院で博士課程まで進んだのち、石油を採掘する会社に就職した。

石油産出国である海外を点々と忙しく巡っているらしく、現地にそれぞれ住居があるそうだ。
たいそう贅沢な暮らしで高給取り。
あのままキープになっていたらどうなっていたのかな?というのは考えないようにしている。

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