宝くじ効果

年末の風物詩のひとつに、よく出ると評判の宝くじ売り場に並ぶ長蛇の列がある。
かくゆう私も、今年ももちろんそれに参加してきた。

ビルを軽く半周するような気の遠くなる列だったけれど、そこに並ぶ人を眺めているのは面白い。
それに遊園地なんかと違って、ゆっくりとはあるけれど常に進んでいるので、まだ待つのが楽な気がする。
今年は職場の先輩と買いに行った。
普段は割と横柄で、気前はいいけれど結構高慢ちきな彼だ。
近くのコンビニに歩いていくのも嫌。レストランで満席だったら待つなんて論外。駐車場は入り口付近が空いてないと停めない。
そんな彼が、宝くじの長蛇の列には文句ひとつも言わない。
それどころか、最後尾でかちあったおばあちゃんに先を譲る。
売り場に行くために停めた駐車場では、欲を出しちゃいかんと、入り口から遠くに停めていた。
そして心なしか、すました雰囲気で並んでいる。
よく見れば、背筋も少し伸びているようだ。
どうやら「宝くじに当たるためにはいい人でないといけない。謙虚さが大切」といったような信念を持っているらしい。
いや、例え神様が本当にその信念通りに当てていたとしても、一年のこの瞬間だけそうしたって無駄だよと、なんだか微笑ましい。
会社の人たちに頼まれたぶんもがっぽり購入して会社に帰ると、そわそわとみんなが寄ってきた。
割と個性派の人間が揃っていて、いつもはみんながみんな自分の事情ばかり話している。
どん、と机の上に、連番の束、バラの束、ミニの束と並べると、誰も手を出さない。
ここでもみんなその信念をなんとなく持っているらしい。
どうぞどうぞと遠慮しあう。
束を選ぶのでも、選ぶことが欲目に見えると思ってか、みんながみんなお行儀よく上からとっていく。
普段の彼らを知っている身としては、これほど面白い映像ったらなかった。
みんないい子ぶっちゃって。
そういえば去年もこうだったけど、みんな全然当たってなかったな。
普段は喧嘩もするけれど、こういうおじさんたちは可愛くて微笑ましい。

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